お役立ち

尊厳を守る為に日々できること

高齢者の尊厳を守る2000年4月、介護保険がスタート。その最初の改正(2005年)の際、介護保険法の目的の中に「要介護状態となった高齢者等の『尊厳の保持』」を明確化する趣旨が盛り込まれました。
 
当時、介護に携わる関係者の多くは、国から「介護現場での尊厳の保持が出来ていない!」と叱責されたように感じました。私自身もショックでした。100%出来ているかと言われると、出来てはいないとは思っていましたが、まさか国から言われる程とは…。
 
しかし、時折テレビから流れてくるニュースに介護職員から利用者への虐待を取り上げられることも少なくはなく、日々介護の現場で頑張っている方々の苦労を一部のスタッフの言動で、介護職員全員が否定される。そんなことが今後ないように、そして虐待をしてしまわないように、日々の検証が始まりました。
 
検証を行っていく中で気づいたことがあります。
何だと思いますか?
 

それは「声かけ」ができていないということです。

 
「声かけ」は尊厳を守ることのひとつに過ぎません。
けれど、今の介護現場で殆どのスタッフができていないことです。
実務者研修に移行前は介護技術の国家試験が実施されていました。
その試験対策として「声かけ」の課題に対する準備を伝える機会がありました。
その際、現役で働くスタッフに実際に「声かけ」をやってみてもらったのです。
 
例えば
「A子さん(女性)85才。ベッド上で臥床している。11:30昼食の為、食堂へ。車椅子への移乗の為声かけしてください。」
という課題があったとします。

介護施設、事業所にて高齢者への声かけ

 
この課題に対してスタッフの殆どは
「A子さんこんにちは、ご飯の準備が出来たので車椅子に移って食堂に行きましょう!」
と、答えました。
 

さぁ、如何でしょう?
素晴らしい声かけですね。
しかし、これでは声かけの得点は得られません。何が不足かおわかりですか?
そうです。本人の自己決定、同意がないのです。

 
声かけの4点セットは

1)挨拶
2)体調確認
3)介護内容説明
4)同意

です。4つ出来て初めて声かけの得点となります。

 
良い例としては・・・

1)おはようございます。A子さん。○○です。(こちらから、気持ち良く、利用者の名前は言いましょう。)
2)体調はいかがですか?よく眠れましたか?食欲はありますか?トイレは行かれますか? 等(本人の体調や時間や内容にあった声かけを心がけましょう。)
3)朝食の準備ができました。車椅子に移って頂き食堂に行こうと思いますが、
4)よろしいですか?行かれますか?

 
いかがでしたか?
いま、介護現場での殆どのスタッフが正しく声かけできていないのが現状です。

 
食堂に行くか行かないか、いま食べるか食べないか、自分の人生を自分で決めるチャンスもないのが利用者の今です。
尊厳を守る方法のひとつに「忙しいから無理!」と決めつけるのではなく、日々同意を求める声かけを行うことを意識してください。

 
自分だったら、何一つ自分で決めることが出来ない人生より、日々の中で自分で決めることが出来る人生の方が良くないですか?

 
部下に、仲間に求めるだけでなく、自分自身が先ずは日々実行してみてはどうでしょう?
 


加藤里美 プロフィール

18才で福祉の専門学校へ入学。

20才で社会福祉法人の老人ホームに就職し、その中で特養・グループホーム・ヘルパー・リハビリ(OT・PT助手がメイン)・デイ・ケアマネを経験。

出産の為に退職。出産後、即、市役所での認定調査員として勤務を始め現在に至る。
29才の頃より講師業を行い、現在は、実務者研修・初任者研修・介護福祉士国家試験対策講座を担当。
ここ数年は、介護保険や障害者の事業所を各所周り、現場の困りごとを一緒に解決する方法を探り、勉強会研修会を開催する日々です。
 
30年以上お世話になった介護の現場にこれからは、恩返しの10年間と長期目標を設定して、いま介護現場で頑張るスタッフの皆さんの背中を押して行く仕事をしていきたいと考えています。
皆さんと一緒に悩みながら、この介護の仕事がかけがえのない素晴らしい仕事であることをお伝えしていけたらと思っています。